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VC vision
前編 後編
第8回 ベンチャーの陽の下に 後編 クリエイティビリティというキャピタル
ウエルインベストメント株式会社の際立つ特徴は、
ベンチャーキャピタルの運営、投資案件の発掘、出資者の募集のすべてを、
早稲田大学ビジネススクールで構築したネットワークを使って展開していること。
さらに今後は、留学生を通じて海外投資のシステム化も視野に入れているという。
ベンチャーキャピタル業界の中で、一歩リードする投資スタイルを確立しつつある
ウエルインベストメント株式会社が目指すベンチャーキャピタルとは何か。
interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
投資先一覧パートナー
早稲田大学教授がマネジメントを

【森本】 ウエルインベストメントのスタッフ構成はどうなっていますか。スタッフの方々の経歴も含めてお聞きしたいのですが。
【東出】 特徴的なことは、私もそうですが、早稲田大学の教授がマネジメントに関わっていることですね。基本的には事業経験者、とくにオペレーション経験者、証券会社などのファイナンス出身者、そして、いまお話しした大学教授といったメンバーで構成されています。ただ、大学の教授に関してですが、ピュアな意味でアカデミックな人は一人もいません。私自身も大学を卒業したあと鹿島建設に入社して、建設・不動産事業を手がけてきて、イギリス、フランス、ドイツなどで不動産投資をしてきた経験があります。取締役会長を勤めている松田修一にしても公認会計士の出身で、その時期にベンチャー支援を長いこと手がけてきた経験を持っています。
【森本】 キャピタリストは何人いらっしゃるのですか。
【東出】 現在動いているキャピタリストは、6人です。
【森本】 その6人で、それぞれの投資先を担当して、サポートしていく活動をしているわけですか。
【東出】 担当については、うっすらと決まっているという感じですね。他の人間の力やアイデアが生きる時はそれを全部使っていきますので、一つの投資先に対して誰かがすべての責任を持つという形で、明確にきちっと決まっているわけではありません。社長はキャピタルに専念していますけれども、私自身でいえば、投資先を担当する一方、大学での教育もありますし、むしろ、スタンスは大学のほうに比重が大きいですね。
【森本】 そういう体制のもと、ウエルインベストメントはどんなスタイルのベンチャーキャピタルを目指しているのですか。
【東出】 そうですね。私たちのベンチャーキャピタル事業は、「早稲田大学」「テクノロジー」「イノベーション」の3つをキーワードにしています。これをベースにしたベンチャー支援で、社会にバリューを還元しながら、リターンをあげていくということが、目標といえると思います。
【森本】 その3つのキーワードが、ウエルインベストメントの特徴になるわけですね。
【東出】 ええ、「イノベーション」と「テクノロジー」は、ウエルインベストメントの事業の姿勢を示すキーワードになると思います。イノベーションをテクノロジーとほぼ同義に捉える向きもありますが、私たちは、イノベーションの本質はクリエイティビリティだと考えています。たとえば、バイオテクノロジーで新しいガンの特効薬をつくるといった場合、その新薬を開発する技術だけがイノベーションではありません。その新薬の製造から販売、サービスという一連のビジネス・プロセスを通して、さまざまな知恵・アイデア・シーズを出し、取り入れていかなければビジネスにはなりません。そうしたビジネスの形を仕上げていくまでのプロセスの中には多くのクリエイティビリティが必要になります。できあがった商品と、そのバリューを顧客の手に届けるための流通プロセスにおける、クリエイティビリティなどもとりわけ重要です。つまり、種を生み出すこと、それをビジネスの形に発展させること、そして、そのビジネスの形をバリューとして実際に顧客の手に届けることの3つのプロセスには、何らかのクリエイティビリティが必要になってくるということです。

30年かけて築いてきたネットワーク

【森本】 こうした取り組みの全体を「イノベーション」ととらえているわけですね。
【東出】 はい。ですから、「テクノロジー」は私たちが進めるイノベーションを実現するベースになります。新しいテクノロジーをビジネスとして「開発」して、結果としてできあがったビジネス・システムを「イノベーション」と考え、それを起業家と共に達成することに寄与できるベンチャーキャピタルでありたいというのが、ウエルインベストメントの考えです。
【森本】 その「テクノロジー」のキーワードについても、早稲田大学発のテクノロジーを一つのベースにするということですね。
【東出】 そうです。
【森本】 案件の発掘は、どのような形で進めていらっしゃいますか。
【東出】 ファインディングでは、足を使いながらどんどん発掘しているというわけではありません。先ほど(前編)も話しましたが、早稲田大学のビジネススクールの教授たちには30年にわたる長い時間をかけて築いてきたネットワークがあります。そうしたネットワーク内での紹介や売込みの中からピックアップしています。日本のベンチャーキャピタルでは、ファインディングに相当時間を費やされている例も多いようですが、私たちの場合は、ファインディングにほとんど時間を使っていないことが特徴といえます。
【森本】 大学のネットワークを通じた案件がほとんどとのことですが、その投資先の業種に何か特徴はありますか。
【東出】 社会的トレンドの中で、IT革命と言われれば、そういう分野の案件が相対的には増えてくるということはありますが、業種、業態において早稲田ルートだからという特徴はないですね。満遍なくいろいろな分野の案件があります。ただ、私たちのスタンスが、イノベーション、テクノロジーに重きを置いていて、早稲田1号ファンドで、よりハイテク分野で金額も大きな規模の案件に目を向けていますので、バイオ関連の案件が増えてきている傾向はありますね。
【森本】 案件の決定プロセスはどのように進められているのですか。
【東出】 実際に会って話をするスクリーニングをかなりの時間をかけて、案件を絞っていったうえで、役員会で最終決定していきます。最終の投資決定に先立ち、役員会で役員全員の前でプレゼンしていただくというプロセスが必ず入ります。
【森本】 役員会は毎月開いているのですか。
【東出】 月に2回は行っています。
【森本】 役員会では、毎回、案件の審査をしているのですか。
【東出】 案件はなんらかの形で遡上してきますね。




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