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Vol.003 グロービス経営大学院 学長 兼グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー  堀義人第4話 企業の価値とは何か
コラム(4) パーソナル・データ(4)
スケールよりクオリティの選択
 創業当時は80万円だったグロービスの資本金も、増資を重ね、今は100倍以上に増えましたが、じつはこの資本金の中には法人やベンチャーキャピタルからの出資は一切ありません。これもグロービスの特徴と言えます。グロービスの株式は僕の他、内部のスタッフや外部講師が保有しています。今のところ無借金経営ですし、株式の配当もできるようになりました。
  ベンチャー企業成功の証として株式公開や上場があります。世間でもベンチャービジネスで成功したら株式を公開して、創業者利益を手にするのが常識というかゴールと見ている人も多いようです。僕自身も株式を公開しようかと、その誘惑にかられたこともありました。でも、そうはしませんでした。
  幸いグロービスは株式のほぼ100パーセントを社員や講師が持っている会社であり、株主からの公開プレッシャーがありませんでした。また学校経営というものは基本的に大きな投資がいらないビジネスですから、株式公開による資金調達の必要もありませんでした。僕たちは資金をつぎ込んで学校を大きくするよりは、規模は小さなままでも教室のクオリティを高めることを選んだというわけです。

経営者が心に抱くべきこと
 株式公開と関連して言うと、企業を計る物差しとして最近は時価総額がなにかと話題になっています。僕も一人の経営者としては、時価総額最大化を究極の目標にしなければならないのかもしれません。そういう考えに立つと、株式非公開の選択は間違っているのかも知れません。
  しかし、僕自身は時価総額絶対主義には非常に懐疑的なのです。なぜなら、会社の価値は時価総額だけで計れるものじゃありません。それは、その他の数値、たとえば売上高とか利益とかいったものだけで判断することも間違っていると思うのです。
  会社の価値というものは、その会社が社会に対してどれだけ有益なものであるのか、また、ステークホルダーがどれだけ満足をしているかによってきまってくるものだと思っています。
  だから経営者とは、お金儲けをしようと野心を持つよりも、社会に認められる努力をするべき、ステークホルダーに心のこもったコミュニケーションをするべきなのです。そうすれば、結果的に利益は付いてくるでしょうし、企業価値は上がっていくものだと思います。

ベンチャーキャピタルの創業
 ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)時代に描いていたグロービスのビジョンは、経営者教育機関の設立だけではありませんでした。ベンチャーを創業する人材の育成、創業や経営のノウハウを提供する研究機関の設立、そして資金を提供するベンチャーキャピタルの創業という3本の柱を考えていました。
  グロービスの経営は順調で、人材育成や研究についてはなんとか手を付けられました。しかしベンチャーキャピタルは他の事業と違い原資が必要となります。自分の手元になければ、ファンドに出資する投資家を集めなければなりません。
  そこで、親交のあった先輩方に思いをぶつけてみたところ、幸い賛同していただくことができました。こうして1996年には第1号ファンドであるグロービス・インキュベーション・ファンド(GIF)を立ち上げることができました。
  そして第2号ファンドでは、欧米のプライベートエクイティで高い評価を得ているアメリカのパトリコフ社(現エイパックス社)と業務提携を行い、200億円という大型ファンドをつくることができました。



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