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Vol.007 株式会社ドリームインキュベータ 代表取締役会長 堀紘一第3話 成功の可能性、失敗の可能性
コラム(3) パーソナル・データ(3)
創業アイデアはナイルの流れから
 ボストン コンサルティング グループには、サバティカル(研究休暇)という制度がありまして、仕事や研究に疲れたメンバーにリフレッシュしてもらうためのものです。米国本社のほうから、このサバティカルを社長である私に取るようにと言ってきたんです。社長が率先してサバティカルをとらないと、部下もこの制度を使いづらいだろうという配慮だったのです。
  そこで、3カ月の特別休暇をとって、妻とふたりで世界一周旅行をすることにしました。旅の途中、エジプトの王家の墓があるルクソールへ寄りました。そして、予約しておいたホテルの部屋の窓からナイル川の流れを見つめていました。そうすると、濁った川の中をパピルス(カヤツリグサの一種・古代エジプトの紙の原料)が流れていくのが見えたのです。「なんとも情けない景色だな」と思って見ているその時に、ふと新しいビジネスモデルが思い浮かんだのです。
  それが以前から考えていた中小企業向けのコンサルタントについてのものだったのです。「中小企業には高額なコンサルティング料を払う余裕がない。それなら料金の代わりに株で払ってもらえばどうだろう」と。この時のひらめきが現在のドリームインキュベータ社の創業につながってきたわけです。この旅がなければ、僕自身が創業することも、なかったかもしれませんね。

一部上場を目指す
 新しいビジネスモデルを思いついたわけですが、本当にやっていけるものかどうかを調査しなければなりません。帰国して、さっそく調べてみました。日本にはもちろんない。アメリカにはベンチャーキャピタル、つまり投資をやるところはあってもコンサルタントを行っているところは見あたらない。もちろんヨーロッパにもありませんでした。
  次に、そのビジネスモデルの成功の可能性を検討してみました。新しいビジネスモデルというものは、実は成功の可能性があるかどうかを判断するのが一番難しいんです。誰も手がけていない新しいビジネスといっても、たとえば「必要がない」とか、「ユーザーが誰もいなかった」から、それまで誰も手をつけなかったということもあるわけですから。
  僕自身のその時の結論は「成功の可能性はある。とにかくやってみよう」ということでした。最初は失敗する可能性もあるわけですから、僕も含めて3〜4人で小さく始めようと思ったわけです。もし上手くいかなくても少人数なら講演料とか印税でも何とか食べさせていけるという自信がありましたから。
  でも僕が新しいビジネスを始めると聞いたら、「私も連れていってください」という部下が次々と現れました。それが10人を超えると、さすがに講演料だけでは食べていく自信はないわけです。そして、その時、腹をくくりました。それでは、いっそのこと株式会社にして、自分たちの会社も東証一部上場を目指していこうとね。

(9月27日更新 第4話「喜びも悲しみも利益も分かち合う」へつづく)



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