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Front Interview
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第3話 第4話
Vol.012 三井法律事務所 弁護士 代表パートナー 三井拓秀第1話 新世界へ
コラム(1) パーソナル・データ(1)
企業法務の世界へ
 大学には6年間通いました。司法試験のために2年間留年しています。6年目で司法試験に受かりました。司法試験の勉強をしている途中に、迷った時期もありました。母親がそんな私を見て「うちの仕事など手伝わずに勉強しなさい」と言い始めた頃、3度目の挑戦で司法試験に合格しました。
  合格はしたものの、選択肢がある中で、自分がどのようにすれば早くスキルを身につけることができるのか悩んだものです。丁稚奉公でもいいからと思い当時日本で一番大きな法律事務所の門を叩いたのです。日本一大きいといっても総勢17人しかいませんでした。
  そこは企業法務を専門にしていました。法律事務所にお客様である証券会社の方から「こういう取引ができたからこれを契約書にしてほしい」とか、「こういう取引をするのだが、これは法律的にどうなのだろうか」という相談がよくありました。実際のビジネスの現場では、お客様は駆け引きをしたり同業者を出し抜いたりいろいろなことをしているわけで、その法律的な面について相談されるわけです。証券や金融などといった仕事は今まで体験してきた生活ともかけ離れた世界で、商売のやりとりが今ひとつよくわからなかった。本当の商売の肝や勘所、リスクといったものが見えてこないわけです。

米国のロースクールへ

 そんなところで「証券取引法第何条によれば」などと言っていてもしょうがない。実際の商売には間に合わないということもありました。それで"現場を見たい"と痛切に感じるようになったのです。それは私の家が商売を手伝っていたとことと関係があると思います。実際の現場ではさまざまなことが起こるものだということを実感していましたから。
  また私が弁護士になった70年代の後半は、日本の金融関係の市場が規制緩和で沸いていた頃です。お金が日本にどんどん入ってきていました。しかしそうした分野で目立った活躍をしている弁護士は、ほとんど海外の人たちで、日本人はほとんどいませんでした。
  日本企業の取引なのに、実際に仕切っているのは米国の証券会社であったり、ロンドンから来る弁護士だったりするわけです。それを見て、取引の大本があるのは海外なのだなと実感したわけです。そういうところを自分の目で見たい。本場の法律や制度を理解したいと思うようになりました。弁護士になってから5年目ぐらいたったころでした。
  本来ならその事務所に勤め続けて、キャリアを積んで上へ上がっていけばよかったのでしょうが、心の中では、ニューヨークやロンドンに行ってみたい、さらに違った経験を積んでみたいという思いが募っていったのです。

2月14日更新 第2話「創意工夫の輪」へつづく)




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