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Vol.026 法政大学名誉教授 法政大学学事顧問 清成忠男第4話 自立
コラム(4)
必然の出会い
 私は自分の足で歩いて、確認しないと納得できない性分です。ただ、どういうわけか、自分から人に会いに行くばかりではなく、向こうからも人が訪ねて来られる場合も多々あります。
 以前、岡山県庁に頼まれて中小企業の研修セミナーに講師として参加しましたが、1時から3時までの講演が終わって帰ろうとしたら、これから自分の会社に来てくれと声をかけてくる人がいるのです。「この後もセミナーがあるけれど、受けなくていいのですか」と訊いたら、「そんなの聞かなくていいのです。それより、先程伺った先生の話を、弊社の役員全員を集めるので、ぜひ話してもらえませんか」というのです。差し出された名刺を見ると、「福武哲彦」とありました。福武書店(現・ベネッセコーポレーション)の初代社長・福武哲彦氏だったのです。当時はそんなこと知るわけもないので言うがまま連れて行かれたら、まだ木造の社屋でした。でも、事業はいろいろ手がけていらしたようです。
 後年、ベネッセの総長になられて学術文化財団を作られたということで、そこの評議委員になってくれという依頼が来ました。その時、ご子息の現社長・總一郎氏に、「私、あなたのお父さんに会ったことがありますよ」といって、先程の顛末を話したら、ビックリされていました。

自分の頭で考える
 ベンチャービジネスというものは、自分の頭で考えて行動し、努力し続けることです。他力依存ではいけません。自助努力に必要なのは自立で、自立するためには、自信を持ってこれだといえるものが自分になければなりません。それがない限り、自立できません。それは自分で見つけて、身につけていくものです。それができる人がベンチャーとして成功しています。失敗しても、みんなそこから学ぶのです。失敗してもいいのです。そこから学べば。学ばなければ、何回やってもダメです。
 長年、教育に携わってきた者として学生に説いているのは、自立しなさいということです。自分で考えて、自立した人間になることが大事なのです。会社の言いなりになって、会社人間になって、それで過労死するなんて、本当にばかばかしい話です。死ぬくらいなら、その前に自分の頭で考えてみればいいのです。また、常に辞めるという選択を懐に抱いて働いていれば、会社というものが見えてくる。自分の頭で考えれば見えてくることが、この世の中にはたくさんあるのです。
 米国では、子供のころから自立しなさいといわれて育っていきます。よくアジア系は家族共同体に依存するからダメだということをいわれますが、本当はそうではありません。米国でベンチャーとして成功している中には、韓国系や中国系の人も多いですからね。彼らは、日本人に比べて自立心があります。新興勢力のインドも、たいしたものです。ベンチャーというのは、富を創造することだという確たる意識を持っています。日本人には、そうした意識がいちばん欠けていると思います。



次号(2008年5月7日発行)は、 株式会社ライトレール 代表取締役社長の阿部等さんが登場します。




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