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Vol.032 株式会社船井本社 代表取締役会長 船井幸雄第4話 良心

強者も弱者も共に生き抜ける道
 40代半ばから「競争」から「共生」へと、私の価値観は大転換しました。そして、強者も弱者も共に生き抜ける道を模索するようになります。これが新しい経営法の構築でした。「共生」をキーワードにした経営法、これが船井流経営法の本質になるのです。競争より共生というスタンスに立って考え方を改めると、世の中が劇的に変わって見えました。
 その中で見えてきたことの一つが資本主義の矛盾です。開発という名の破壊を続けるシステム、消費拡大と呼ばれる浪費、そこに加わる競争原理など、こういうイデオロギーに未来はないのではないかと思いました。このときから新しい経営戦略を構築する以前に、世の中はどういう仕組みになっているのか、人間の本来あるべき姿はどういうものか、そういう研究に力を注ぐようになりました。その結果、「経営のポイントは人。人材が人財を作り出す。トップの包みこみ力が重要」という経営の原則を発見したのです。
 また、共生の発想から「競争せずに儲けるノウハウ」を開発しました。これにはいくつかの方法がありますが、私たちが重視した一つが「主力づくり法」です。主力とはその店が得意とする商品であることはもちろん、ライバル店が正面から競争に打って出ることができない商品のことです。つまり、各店が一番得意とする商品、いってみれば店の長所を伸ばす商品を主力にすればいいのです。短所を改善するよりも長所を伸ばすことで短所がなくなるという長所伸展法です。主力づくりに成功した中小企業は、間違いなく成長しています。

自分の自由と同じくらい相手の自由を大切に
 自由であることはとても素晴らしいことだと思っています。終戦後に突然すべてが自由になったときは戸惑いましたが、中高から大学にかけて自由を謳歌した思い出があります。自由がすべての人々にとって素晴らしいものであるためには、自分の自由と同じくらいに相手の自由を大切に思わなければなりません。自分の自由だけを主張する人間ばかりが増えたら、瞬く間に世の中は不自由な社会になるでしょう。
 「自他同然」という言葉があります。自分と人のことを同じように考え、相手の喜びは自分の喜び、相手の悲しみは自分の悲しみというように、他人のことも自分と同様に大切に思って接すると、自分も相手から大切に思われるものです。しかし、現実には残念ながら自己愛の強い人間ほど、他者を愛することができません。自分が一番大切だから、他人を犠牲にしてでも成り上がりたいというのが多くの人間の姿なのです。
 現代社会を見ると「今だけ、金だけ、自分だけ」という考え方を持って生きている人がとても多いと思います。その中には結果として「勝ち組」などと呼ばれている人間もいるようです。たとえ「勝ち組」にはなれなくても、人並みの生活が送れたらそれで満足という考えの人間も多くいるでしょう。しかし、他人を蹴落として不幸にすれば、波動の原理からいうと、その不幸は必ず自分の元へ返ってきます。常日頃から自分のことのように他者の気持ちを大切にする生き方が、自分も人類も幸せにする、真の自然の理にかなった人間本来のあり方だと思います。



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