2008.12.24update 起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

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VC vision
前編 後編
第7回 ベンチャーよ、故郷を振り返れ 前編 日本型ハンズオン
商品もなければビジネスモデルもない、起業以前の経営者との対話の中から、
創業へ向けてのシナリオを構築する、スタートアップに徹底してフォーカスした投資。
そして、社会に価値をもたらす事業の創成と強い経営者の育成。
あたかも親が子を育てるような、日本人的メンタリティにあふれたハンズオンがそこにある。
interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
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仕事熱心でない人には投資しない

【森本】 日本テクノロジーベンチャーパートナーズは、個人を責任体にしたファンド展開をされているわけですが、投資決定の判断はどのようにされているのですか。
【村口】 私がベンチャー経営者と打ち合わせを重ねて決めています。いわゆる組織型のベンチャーキャピタルですと、事業計画書など、審査書類を一通り出させて、財務予測を進捗管理していくというパラダイムになっていますが、私のファンドはスタートアップの投資ですから、財務予測はその時点では立てられません。ですから、どういう商品を生み出して、どういうビジネスにつなげていくか、そして、どうやって起業させるかという創業に向けたディスカッションを重ねなければ、話が始まらないのです。そういうプロセスを経て、これなら起業しても大丈夫という判断ができた企業に創業のための投資をしていきます。あくまでも、起業、創業のための投資というところが、ポイントです。
【森本】 そうした案件の選別審査に当たってはどういう視点を持って臨んでいるのですか。
【村口】 やはり、社長の人間性ということになりますね。一つに誠実であること。そして、根性があること、仕事熱心であること、勉強熱心であることなどです。そして、創業したあとにも20年くらいは働き続ける気力があることも大事です。ということなので、投資対象は35歳以前がいいと考えています。「ビジネス余命」という言葉をよく使うのですが、創業してから10年から20年はそのビジネス界で頑張れる時間をもっていないといけないと思いますから。
【森本】 40代、50代よりも、30代、それも前半であれば、それだけ可能性は大きくなりますからね。
【村口】 さらに、ネガティブリスクで言うと、仕事熱心でない人には投資しないですね。たとえば、定時を過ぎて電話を入れても誰も出ない会社ですね。これでは、一生懸命やっていると口で言われても信用できないですよ。1週間1週間で目に見えて劇的に変わっていくような会社がいいですね。そのためには、社長が仕事熱心、勉強熱心でやっていないと進化を遂げていけない。なにしろ、こっちは、2年3年早めに先行投資して、創業にできるだけ早く着手してもらうわけですから、週休2日なんていうサラリーマンのような感覚でいるようなところは論外です。
【森本】 最終的な投資判断は、どういう段階で、また、どういう根拠で行っているのですか。
【村口】 それはもう、何回も調べて、検討を加えます。創業するということは、未来の出来事ですから、シナリオは何通りでもたくさん書けるわけです。もし、こうなったらどうなるだろう、というシミュレーションを何度も何度も繰り返していくわけです。でも、そのシナリオがすべてを網羅しているかどうかはチェックしようがないのですね。これから起きることにマニュアルなんてものはないわけですから。だから、最後の最後は「感じ」というか、勘みたいな要素も入ってきます。
【森本】 まさに直感ですね。
【村口】 こういう直感が起きるのは、たとえば、朝早く目が覚めた時に、何かイヤーな感じがしたりするときがあるのです。そういう時は投資すべきではないということですね。つまり、もっとよく調べろ、ということだと思います。それが何なのかは自分でもよくわからないですけど、何かが足りないなあとか、何か違うなあ、という感覚ですね。しかし、投資が成功するかどうかは、一から十まですべて私の責任です。もし投資先が倒産した場合でも、これは残念ながら私の失敗でした、と胸を張っていえるかどうかなのですね。自分で行う投資判断に自信をもてるかどうかは、非常に重要なことなのです。

経営者は個性的でなければいけない

【森本】 何度もディスカッションを行い、検討を重ねるということですが、具体的にはどういう検討を行うのですか。
【村口】 企業がスタートする時点で必要なのは、その企業がもつ技術のトレンドが5年以上の魅力を持ち続けるだろうという判断ができることです。そのための何かがなくてはいけません。検討とは、その何かを探す作業でもあります。たとえばブロードバンドは、いまではずいぶん定着していろいろなビジネスに発展していますが、問題は、5年前にそれを読み取ることができたかどうかということなのです。5年後をさかのぼった「今」に投資するわけですから、そういう作業の連続です。5年後のビジネス動向を読み取ることができるかどうかなのですね。
【森本】 創業後のベンチャーへの携わり方や育成方法は、どんな手法をとっていますか。
【村口】 いったん投資したら、経営者の自律、主体性、個性にゆだねるということです。私はその人に投資をしているわけだから、その人の経営をまっとうしてほしいというのが一番です。それが何よりも重要だと思います。したがって、通常いわれるハンズオンはしません。
【森本】 NTVPのHPにはハンズオンを標榜すると書いてあるわけですが、そうすると、村口さんのいうハンズオンとはどんなものになるのですか。
【村口】 私は、他のベンチャーキャピタルがハンズオンと言って行っている、販売先を紹介したり、予算管理したりということはしません。私がやることは、取締役会に出て、事業の状況をよく聞いて、質問をして、確認をするということです。場合によっては、発破をかけることもしますが、基本的にビジネスをするのは、経営者なのです。たとえて言いますと「替え玉受験」はしないというのが基本方針です。そうしなければ、経営者は強くなっていかないでしょう。経営者が強くならなかったら本当の価値は出てきませんし、価値が出てこなかったらベンチャーキャピタルは儲からないわけです。
【森本】 強く関与することはあっても、経営者の主体性は損じないということですね。
【村口】 経営者は個性的でなければいけないと思います。相撲取りだって一人一人個性があって違いますよね。他の相撲取りに朝青龍と同じ相撲を取れといってもそれは無理な話で、経営者も他の経営者と同じことをやっていてはダメなのです。「かわいい子には旅をさせよ」ということです。これは昔からの日本人が共有する価値観でもあります。昔の日本の親はそうやって子どもを育てたものです。ですから、私のハンズオンは、「日本型ハンズオン」といってもいいかもしれませんね。




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