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VC vision
前編 後編
第9回 パイオニアという名のベンチャー 後編 ポストベンチャーキャピタル
現在、ITX株式会社は、ライフサイエンス事業、ネットワーク&テクノロジー事業、
モバイル事業、ビジネスイノベーション事業の4つのカテゴリーで事業を展開している。
それぞれのコア事業の事業展開を軸に、
グループ会社各社の人材、ノウハウ、ネットワーク、情報を駆使して、
投資育成できることが同社の強みだ。
interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
投資先一覧パートナー
グループ内で事業や人事面の相乗効果をもてる

【森本】 各事業への支援策として、どういうコンセプトを掲げていらっしゃるのですか。
【塩谷】 コンセプトとしては、事業を基の部分から立ち上げていくこと、投資の比率はできるだけ大きく取っていくこと、そのなかでキーとなる人材や取締役になる経営人材を配置していくことでトータルな支援をしていくことを掲げています。しかし、そうはいってもマイノリティ投資も数多く行っています。マイノリティ投資の観点からいうと、当社には、その投資先のベンチャー企業の事業展開する業界に深く入り込んだグループ会社がありますので、その業界の投資案件ですとか情報などがいろいろ入ってくるわけです。そういうものを隈なく有効活用しようということになるとマイノリティ投資もやるようにはなります。
【森本】 マイノリティ投資は、どれくらいの比率で取り組んでいるのですか。
【塩谷】 2006年9月末現在、130社に投資して、そのうちの95件がマイノリティ投資です。しかし、投資残高は871億円あるうち、マイノリティ投資が占める残高は121億円です。やはり、子会社設立とその事業育成がITXの業務の大半を占めることになります。ただ、マイノリティ投資のなかから、ステップイン投資によって、グループ会社として育成する対象になることもあります。
【森本】 ITXは、投資と同時に事業育成にフォーカスしているということですが、ベンチャーキャピタルと異なる点、また、共通している点というのはどのようなところだとお考えですか。
【塩谷】 我々の投資先の多くが連結会社になっているので、それが決算上に表れてくるわけです。たとえば、ジャフコさんを例に取ると、会計上は連結していませんが、成功報酬を会計に反映させていきますので、そこが一番大きな違いですね。うちの場合は、投資し連結対象となる会社の収益自体を連結事業収益として認識します。投資育成先を売却した際のキャピタルゲインは売上・利益に計上する会計になっています。それからもう一つ、投資先(グループ会社)はいろいろな機能をもっていますので、A社の機能がB社の育成に役に立つといったシナジー効果が大きく反映される点も特徴的だと思います。これは、人材の面でもグループ会社相互で供給し合うことを行っています。こうしたグループ内で事業や人事面で相乗効果をもてる点は、ベンチャーキャピタルと違う点なのではないかと思います。
【森本】 そのグループ内でのシナジー効果は、意図的に形成してきたものなのですか。
【塩谷】 当初から業界を絞って事業投資をしてきましたので、自然に形成されてきたものですね。もちろん、今は、それを我々の強みとして意識的にやっています。ITXになった時点では、すでに、そのような戦略を取るようにしていましたから。

業界を横断するネットワークを組む

【森本】 そのシナジー機能は具体的にはどういう展開を見せているのですか。
【塩谷】 いま、とくに力を入れている分野としては、医療事業、携帯電話販売事業、自動車アフターマーケット事業があります。これらは、当社の事業収益のコアを形成している事業ですが、医療事業はKSオリンパスという販売会社を中心として医療機器販売関連の事業を展開しています。携帯電話販売事業はアイ・ティー・テレコムを中心に、そして、自動車アフターマーケット事業はブロードリーフを中心に展開しています。シナジーとしては、医療事業でいいますと、米国の医療デバイスのベンチャー企業への投資をやっています。日本人が米国で投資しようとしても、米国には医療ベンチャーの投資家のネットワークができ上がっていますから、いきなり参入するのは難しいわけです。しかし、当社の米国法人にはそのネットワークに通じる人間がおり、しかも、そのデバイスの特性によってはITXグループの強力な国内販売ルートを活用した日本での販売力を提案することもできます。国内で販売事業を展開しつつ、一方で、米国での投資も実現していくというビジネスモデルを形成しているわけです。当然、いい投資ができれば、高いキャピタルゲインが獲得できますから、国内販売とあわせてダブルで収益を上げていくこともできるわけです。これが一つのシナジー効果といえます。
【森本】 自動車のアフターマーケット事業の場合はどうなのですか。 
【塩谷】 自動車のアフターマーケット事業は、ちょっと違う形になります。ブロードリーフは、整備業、鈑金業、中古車販売業といった事業の業務支援ソフトなどを開発して販売しているのですが、いま、業界横断ネットワークをつくっています。自動車のアフターマーケットはその業務が、他にも、自動車の解体業者、部品商など非常に細分化され、かつ一事業者が複数の業務を行っているケースが多い。こうした各業務に向けて業務ソフトを提供して、これらをネットワークでつなげていくことで業務効率を高めます。こうしたネットワーク化で各業務の効率を改善することのできる業界は他にもたくさんあります。
【森本】 自動車アフターマーケット業界の枠を超えて、様々な業界の中小企業をターゲットに展開を図るというわけですね。
【塩谷】 はい。業務支援ソフトという点では、他業種でも自動車のアフターマーケット業界と共通関連するノウハウは結構あるのです。現在では機械工具、文具などといった業種でスタートしています。そういう業種に特化したパッケージをつくって販売していまして、さらにこれを、そのほかの違った業種にも広げていく計画でいます。
【森本】 そのいろいろな業種を対象にしたソフト開発も自社内で作成するのですか。それらの業種に詳しい人材の確保はどうしているのですか。
【塩谷】 人材はグループ内にいるのですが、こうしたパッケージソフトは、業務フローを研究し、精度の高いデータベースを構築すればできてしまうことなのです。それに、ターゲットとなる業態を絞っていますから、そこはそんなに難しいことではないですね。




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