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VC vision
前編 後編
第15回 ベンチャーケミストリー  前編 コンセプチュアル・ファンド GMOベンチャーパートナーズ株式会社 取締役 村松竜
インターネットのインフラ・メディア・金融ビジネスを軸に事業を展開する
GMOインターネットグループは、日本のITビジネス界のリーダーとして、
社会的認知が高まってきている。
そのGMOインターネットグループは2005年9月、
インターネットサービス系のベンチャー支援を目的に
GMO VenturePartners株式会社を設立。
その従来にない発想でのユニークなファンド展開は 投資家からも高い注目を集めている。
今回は同社の村松竜取締役に、
GMOVenturePartners株式会社が目指す新しいベンチャー支援組織観をうかがった。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
パートナーズ GMOベンチャーパートナーズ 投資先実績一覧
グループ展開が進む過程で派生したひとつの事業

【森本】 GMOVenturePartners株式会社の概要からお聞かせいただけますか。
【村松】 GMOVenturePartners株式会社(以下GMO-VP)は、1年半前の2005年9月に設立されました。その際に、未上場株式に投資する、いわゆるベンチャーキャピタルファンドを組成しましたが、我々としては、特にベンチャーキャピタル事業をスタートさせたというよりも、GMOインターネットのグループの広がりが進む過程で派生してきたひとつの事業にベンチャーキャピタルも備わってきたという認識にあります。グループの中心であるGMOインターネットは、1999年に上場して以来、私たちが「グループジョイン」と呼ぶ基本的にはプリンシパルかつマジョリティベースの資本提携の展開で、企業規模の拡大を継続して進めています。現在、グループ全体を構成する連結子会社数は40社以上あり、2,000人を超えるスタッフを抱えています。これらは基本的には、インターネットのサービスインフラビジネスを展開する企業群ですが、今後もこの分野で業界NO.1としてのポジション維持と強化を目的に連結グループを増やしていく予定でいます。
【森本】 ベンチャーキャピタルの事業化にはGMOインターネットグループとしての目的が明確にあると思いますが。
【村松】 そうですね。私たちのベンチャーキャピタル事業には、私たちが持ついろいろな取引先、提携先、顧客、技術者とのネットワークを、より広範に、そしてより有機的に作っていこうという狙いがあります。これらの取引先には、急成長している企業がたくさんあります。しかし、無論そのすべてがGMOインターネットグループにグループジョインする対象というわけではありません。グループジョインする企業は年に数社程度で、多くはマジョリティ投資の対象にはならない企業です。しかしながらこうした企業とも、数パーセント程度のマイノリティ出資というかたちでご縁を持ち、グループ企業とは違ったオープンなネットワークを形成していくべきではないかという発想が出てきたのが、ことの発端になります。マイノリティ投資はこれまでのマジョリティなプリンシパル・インベストメントの展開とは異なり、グループ化を進める投資ではありませんから、それ専門の別組織による展開が必要だということになり、約1年以上の時間をかけて検討した結果、外部の出資者も募る投資事業有限責任組合を運営するGMO-VPの設立へと進展していったわけです。


投資後の事業支援ができる組織を作ること

【森本】 村松さんは、そのGMO-VPの取締役に就任したわけですが、それまでどのようなお仕事をされてきたのですか。
【村松】 GMO-VPの設立には、私個人の経緯もひとつのきっかけになったと思います。私は大学卒業後、まずジャフコに入社しました。ジャフコ時代はITベンチャーへの投資を主な活動ステージに、投資担当者としての実績を積んできました。1995年ごろからインターネット業界に注目した投資活動をしていまして、上場前のGMOインターネットへの投資は実は私が担当しており、あの時代ですから、上場後のGMOは時価総額が1兆円を超える時期もあり、100億単位のキャピタルゲインで天文学的なIRRとなりました。1997年から1999年にかけてシリコンバレーのJAFCO AmericaVenturesに赴任していますが、当時は米国でインターネット関連のベンチャーがものすごい勢いで生まれていたときでした。そうした米国の動向、日米の差やタイムラグを目の当たりにする体験をして、もともといずれ起業するつもりで入社したこともあり、早く日本でインターネットサービスの分野で起業しないと間に合わなくなる、という考えが日増しに強くなりました。1999年11月にJAFCO AmericaVenturesを退職して日本に戻り、ペイメント・ワンというオンラインのカード決済会社を創業しました。そして、2002年にペイメント・ワンがGMOインターネットグループにグループジョインすることになって、グループに加わったのです。GMOペイメントゲートウェイが2005年にマザーズに上場するまでの6年間は事業会社を経営する立場にいて、ジャフコ時代の投資する側から、逆に、いろんなベンチャーキャピタルから投資される側にいたわけです。
【森本】 ベンチャーに投資する側と、ベンチャーとして投資される側の両方を体験されてきたわけですね。
【村松】 はい。さらに加えて、上場後に企業経営がどう変化するかを体験できたことも大きな発見でした。この3つの立場はそれぞれまったく違う世界なのですね。こうしたことを体験した人は少ないと思います。新たに投資組合を運営するに当たってこの体験は、投資先の支援の観点からは、ある意味付加価値だと考えています。
【森本】 上場前と上場後では、企業経営にどんな違いが生じると考えていますか。
【村松】 一般には、ベンチャーが上場した後には、起業から上場まで強く関わっていたベンチャーキャピタルは、急速に関与しなくなります。そしてそれまでの株主とはまったく異なる、機関投資家や個人投資家が株主権をもって参加してきます。また、四半期ごとに結果を出さなくてはなりません。業績数字が全ての世界ですから。予算未達成なら数年間信頼を失うことになります。言い訳はまったく通用しなくなります。
【森本】 上場した企業の経営陣がどういう質にあるかということをよく知っているベンチャーキャピタルが関わらなくなり、それまでの経緯を知らない投資家が上場後に投資してくる構造には、非常に大きいビジネス上の分断点があると思います。
【村松】 しかし、ここを分断点と捉えるのではなく、クロスボーダーに活動すれば、逆にビジネスチャンスが広がるのではないかと考えています。どちらにもない価値を提供していくことができる存在になれるからです。個人の構想として、そういう両面のアドバイスと投資ができる投資組織をつくりたいという考えがありました。この私の個人プランと、GMOインターネットのマイノリティ投資の事業化が重なって始まったのが、GMO-VPということになります。ですから私たちには、投資後の支援ができる組織を作ることに大きな目的があります。有責法組合にしたのは、上場した後にも買い増しができる、あるいは、上場後の会社にも出資できるシステムを確立させる狙いがあります。





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