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VC vision
前編 後編
第26回 インテグリティ、イノベーション、インキュベーション 前編 コミュニティという資産
1998年に設立された旧株式会社ネットエイジは、
渋谷の街をITビジネスの拠点として、
若いIT事業の起業家たちを支援する草分け的存在であった。
2007年6月、旧株式会社ネットエイジグループは、
グループの名称をngi group株式会社(現在)と改称し、新たな方向性を打ち出した。
ngi groupとして目指すものは何か。
ngi capital株式会社代表取締役社長の金子陽三氏に、
ベンチャーキャピタル事業を中心に、
同グループが掲げる新たな戦略について話をうかがった。

interviewer:森本紀行(ベンチャー座アドバイザー、HCアセットマネジメント代表取締役社長)
パートナーズ主な投資先事例
企業成長に資する投資を行っていく

【森本】 ネットエイジグループは2007年6月に社名を変更されています。
【金子】 はい。ただ、旧ネットエイジキャピタルパートナーズに関していいますと、現ngi capital株式会社に社名変更をしただけで事業内容に変化はありません。一方、ネットエイジグループは同6月に現在のngi groupと称号を変えて、グループ全体の再編および転換を進めています。基本的にはネットエイジが分割して設立した会社を、今日までにngi capitalが吸収合併して各事業を引き継ぐ、グループ再編を行っています。
【森本】 ネットエイジキャピタルパートナーズの当初の設立はどのような経緯だったのですか。
【金子】 まず、現会長の西川潔が株式会社ネットエイジを設立したのは、1998年2月でした。日本のインターネットビジネスをインキュベートする事業展開を行う企業としてスタートしたものです。
【森本】 当時は、日本でもインターネットとベンチャーの時代が来るといわれていました。
【金子】 はい。そうしたインターネットビジネスを立ち上げる新しい起業家のコミュニティを形成してインターネット事業の推進を図ることを目的としていました。1999年に現社長の小池聡がビットバレー・アソシエーションというNPO(当時)の発起人として、渋谷を中心にしたベンチャー起業のムーブメントを起こします。それが各種のインターネット事業のコミュニティ活動に発展していきます。ネットエイジは、このビットバレーの活動で広く知られていますが、本来は自分たち自身がインターネットビジネスを事業化して、そのビジネスを大手事業会社に売却するビジネスが主要な展開でした。ビットバレーを通じていろいろな起業家と出会う機会が多かったので、そうしたベンチャー企業に対してインキュベーターとして支援する事業も進めていったわけです。
【森本】 当時の投資規模はどれくらいのものでしたか。
【金子】 当初は、それほど資金があったわけではありませんでしたので、一案件に対して300万円とか500万円という少額での投資活動を展開していました。たとえば、株式会社ミクシィは当社の主要な投資先ですが、株式会社ミクシィには、当社が創業出資をすると同時に、当社のオフィスを間借りさせるなどをして、株式会社ミクシィ(当時、有限会社イー・マーキュリー)の設立当初から企業の成長をお手伝いしています。ただ、ネットエイジグループ自身も企業を大きくするためにベンチャーキャピタルから資金調達を行っていました。自分たちで単純にビジネスを立ち上げて売却するだけでは、企業を成長させることができませんので、2004年3月、小池聡が経営していた投資会社をグループ傘下に加えて、グループ形成を推進していきます。ここを起点に、インターネットビジネスを中心としたベンチャー企業に投資していくネットエイジキャピタルパートナーズ株式会社という新会社が設立されたのです。それまでのインターネットビジネスを事業化するネットエイジとの2社によるグループ体制が整備されたわけです。
【森本】 その際に掲げられた理念は、どんなものでしたか。
【金子】 ネットエイジキャピタルパートナーズが創業時に目指したことは、フィナンシャルキャピタル(金融資本)とヒューマンキャピタル(人的資本)とインテレクチュアルキャピタル(知的資本)を融合させて、起業家側の立場に立ってあらゆるリソースを集めて、企業成長に資する投資を行っていくことです。また、我々はベンチャーキャピタルであってベンチャーキャピタルでない、ということもよくいっています。我々自身もベンチャーであり、インキュベーターです。そういう我々が、ファンドを運営して起業家に投資して、我々の経験やノウハウなどのリソースをベンチャー企業に提供していることが、我々としての特徴になります。

ベンチャーコミュニティファンド1号設立

【森本】 第一号ファンドを設立されたのはいつですか。
【金子】 2004年3月に「ネットエイジキャピタルパートナーズT」というファンドを立ち上げています。この一号ファンドは、セカンダリーファンドとして位置づけられています。当時はネットバブルが終わった後の時期になるのですが、このころは、2000年ごろに資金調達をしていたベンチャー企業は厳しい状況にあって、リビングデッドになっていた企業が結構あったのです。また、ネットバブルがはじける以前のファンドが満期を迎える時期でもあって、資金繰りが厳しいままのベンチャー企業も多くありました。そこで、他のベンチャーキャピタルがすでに投資している案件を買い取ってきて再投資していきました。我々が、きちんとしたベンチャーファンドを組成して投資する活動をスタートさせたのは2005年5月になります。そして、2005年8月に「ネットエイジ ベンチャーコミュニティ・ファンド1号 投資事業有限責任組合」を設立します。これが、現在、当社の主として運営しているベンチャーファンドになります。
【森本】 セカンダリー投資を始めた2004年とベンチャー投資を始めた2005年の1年の間にファンドに対する考え方はどう変わったのですか。
【金子】 セカンダリーで始めたのは、当時のITをめぐるベンチャー投資の状況がそうだったということが一つと、あと、当時、当社にはベンチャーキャピタリストの人材がそろっていなかったこともあります。まずは、ディールありきからスタートしたということです。我々としては、2005年8月に、ようやくアーリーステージ投資のベンチャーキャピタルとしてスタートが切れたということなのです。
【森本】 その間に、ベンチャー企業のディールとのチャネルづくりができてきたということですか。
【金子】 そうですね。まず、社内の人材整備が必要ですから、2004年から2005年の頭にかけて、チームビルディングを実施して、8月のスタートにこぎつけたということです。




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