起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.001 株隙会社エムアウト 代表取締役社長 田口 宏
第1話 起業に必要なもの
コラム1“Dream” パーソナル・データ(1)
物不足の時代にできた仕組み
 当時の機械工具商というものは、ほとんどがメーカーの販売代理店だったんですね。それに対して、ユーザーの購買代理店をやろうと思い立ったわけです。そもそもわが国の産業構造っていうのはすべからく物不足時代にできた仕組みなんですね。だから、物を作ることが最優先しているわけです。そこから発展していって、供給側の論理であらゆる商売というものができあがっているのです。それを消費者側の論理に変えていこう、というのがマーケットアウトの基本となる考え方ですね。
   僕が学生時代を送った1950年代から60年代は流通革命の時代なんですね。関西ではダイエーの中内(功)さんが立ち上げた主婦の店「ダイエー」、東京・北千住ではイトーヨーカドーの伊藤(雅俊)さんの洋品店「羊華堂」、四日市では今のイオングループの岡田(卓也)さんの呉服屋「岡田屋」といった会社が、この流通革命の波に乗って大変な勢いで伸びていき、これらを目の当たりにしたことで、ずいぶん勉強させていただきました。
   そもそも購買代理店という発想は、当時ベストセラーになった東京大学の林周二先生が書かれた『流通革命論』(中公新書)の中にすでに登場していたものなのです。ただ、あくまでも当時の流通革命は消費財におけるものであって、購買代理店そのものは日の目を見なかったのです。

自己主張のないビジネス
 僕がはじめた購買代理店の仕組みは生産財の市場においてだったわけです。あくまでもビジネスのニーズに基づいて商品を作っていく。ところが、消費財というものは理論どおりにはいかないものなんですよ。だって、好き嫌いの問題で、非常に情緒的な世界ですからね。一方、生産財は需要や数字がはっきり見てくるもので、理論どおりいくものですから、購買代理店の仕組みが非常にすんなり受け入れられたのでしょうね。
  プロダクトアウトというのは生産者側に主張があって、それがマーケット側に対して主張しているということなんですね。ところが、マーケットアウトというのはマーケットの意見に基づいてビジネスを行うものですから、言ってみれば自己主張のないビジネスなんですね。
  東洋経済新報社の梅沢(正邦)さんは僕の経営を「空の経営」とおっしゃっています。自己主張をするのではなくて、自分を「無」にしてお客様のニーズに基づいてビジネスをする。子供時分から親についてお寺に説教を聞きにいったり、社会人になってからも座禅を組みにいったりしていましたからね。
(3月8日更新 第2話「経営者が目指すべきもの」へつづく)



HC Asset Management Co.,Ltd