起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.020 IBM Venture Capital Group 日本担当 ベンチャー・ディベロップメント・エグゼクティブ 勝屋 久第2話 ベンチャーの鼓動
コラム(2) パーソナル・データ(2)
ITベンチャーは渋谷を目指す
 具体的には、月に一度、日本IBMの事業部長や社長を前にサポートすべきベンチャー企業を決める会議を行いました。たとえば可能性のあるベンチャー企業を発見できたときには、そのベンチャーについて「この会社はこれこれこういうコアコンピテンシーを持っていて、事業にはこれだけの市場性がある。将来きっとサーバーがこれだけ必要になるので、今年はサーバーを安価に提供したい」といったことを会議で申請するのです。決定はその場で行われました。
  創業間もないITベンチャーにとってサーバーが安く手に入れられることは経営にとって大変プラスになります。普通の営業活動だけではサーバーなど簡単に売れるものではありません。しかし、サーバーを安価に提供するといった形で、可能性のあるベンチャー企業を支援をすることで、後々サーバーの売上げに繋がっていくことを証明できたのです。
  ネットジェンのプロジェクトが進行していたころ、メンバーのひとりだった伊藤昇(現日本アイ・ビー・エム 理事 ソフトウェアパートナー& GB事業部 長)さんが、「渋谷にITベンチャーの起業家が集まっている場所があるらしい」という情報を聞きつけました。私もその話をおもしろそうだと思い、早速出かけていきました。

ビットバレーショック
 その集まりはビットバレーと呼ばれ、小池聡さん(現・ngi group代表執行役社長CEO )、西川潔さん(現・ngi group取締役会長)、松山太河さん、尾関茂雄さん(現・Zeel代表取締役社長兼CEO)の呼びかけで始まったネット企業のコミュニティでした。そこには若くて将来性のあるベンチャー企業家たちがたくさん集まっていました。彼らは瞳を輝やかせながら、新しいビジネスの話を盛んにしていました。初めて会った人同士がその場で「米国ではこんな風にやっている。日本ならこうローカライズできるのではないか」と新しいビジネスプランを練っている姿は私にはカルチャーショックでした。
  それまでの私のサラリーマン人生でビジネスプランを初めて会った人と気軽にしてしまうことなど考えられなかったからです。 そんなベンチャー経営者たちの姿を間近に見て、正直、仕事を忘れてドキドキワクワクしてしまいました。もちろんビットバレーは仕事の面にも十分すぎるぐらいのメリットがありました。メンバーにはポータルやe-コマースを手がける会社が多く、IBMのサーバーを導入してくれそうな会社がたくさん見つかりましたので。
  ビットバレーは、とてもエキサイティングな人たちの集まりでした。しかし注目され、メディアで大きく取り上げられるようになると、ネットビジネスに挑戦しようという若者たちだけではなく、金融機関や投資目的の人たちが増えてきました。いつのまにかビットバレーが社会的に意義のあるベンチャーのコミュニティから、自分たちのことしか考えない、生々しい商売の場に変化してしまったように見えてきました。私たちはこれでは当初の目的とはかけ離れたものになったと思い、次第に足が遠のいていきました。ビットバレーと関わったことで様々なIT企業と知り合うことができましたが、同時にITバブルの崩壊といった怖さも間近で見ることになります。

(10月17日更新 第3話「キャピタルとは何か」へつづく)  




HC Asset Management Co.,Ltd