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Front Interview
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Vol.020 IBM Venture Capital Group 日本担当 ベンチャー・ディベロップメント・エグゼクティブ 勝屋 久第4話 人と人と人と
コラム(4) パーソナル・データ(4)
ウイン・ウイン・ウイン
 ネットジェン時代、そして現在のVenture Capital Groupの活動を通して、私が一貫して言い続けてきたことが「トリプルウイン」です。トリプルウインとは文字通り日本IBMのような「事業会社」「ベンチャーキャピタル」そして「ベンチャー企業」の3者がともにメリットを得られる関係をさした言葉です。この3者が事業面で協力関係にある例は多くても、3者がともに満足していることは少ないようです。これは大企業とベンチャーの関係を見てもわかりますが、お互い本当のイコールパートナーにはなりきれずにいることが多いからです。
  私はトリプルウインの関係を作るためには、具体的にどうすればよいのかという問題を、ベンチャーキャピタルの方々、とくにインキュベートキャピタルパートナーズの赤浦徹さん、グロービスキャピタルパートナーズの仮屋薗聡一さんなどと徹底的に討論したことがあります。そこで出た結論は事業会社もベンチャーキャピタルもお金や口を出すだけでなく、「ベンチャー企業にマーケティング・営業支援をする必要がある」ということでした。
  ベンチャー企業にとってマーケティング・営業支援は何物にも代え難いサポートとなります。ベンチャーキャピタルにとっても営業支援を行うことで投資先の企業価値は高まりキャピタルゲインを早く手にすることができます。ではIBMにとってはどうか。実は同様のメリットがあるのです。

トリプルウインの伝道師
 この成功事例として、5年ほど前に日本で創業したリアルコムというナレッジマネジメントのソフトウエア会社をグロービスキャピタルパートナーズの仮屋薗さんから日本IBMに紹介されたのですが、日本IBMでは単にリアルコムからソリューションを仕入れて他社に売るのではなく、お客様のニーズ・ケースにより、商流を一緒につくり、リアルコムのソリューション販売そのものを支援しました。するとそのソリューションが売れるに従って、日本IBMにもシステムインテグレーションをはじめ、コンサルティングサービス、ソフトウエアのバージョンアップと様々なビジネスが発生してきました。現在おかげさまで日本IBMのビジネスもかなりの金額の売上に結びついています。
  市場に魅力的な商品を出していくことは1社ではなかなか難しいものですが、いくつかの企業が協業すれば実現の可能性は高まります。リアルコムとのアライアンスの例はベンチャー企業も素晴らしいビジネスパートナーとしての役割を立派に果たしてくれることの証明だと思います。
  話は戻りますが、私はベンチャーキャピタルの皆さんと一緒に作り上げたトリプルウインの思想を広げようと、機会あるごとにベンチャーキャピタルで開かれるミーティングに参加させていただいてトリプルウインについて一生懸命に話すといったことを続けてきました。今では話を聞いてくださったベンチャーキャピタルの皆さんが、「トリプルウインを実現しなければいけない」といってくださるようになっていて、うれしく感じてます。

協力関係は信頼関係
 Venture Capital Groupに異動してからも、私はとにかく外へ出ることを日課にしてきました。これまでの7年間で紹介ベースで約2,600社のベンチャー企業の方々とお会いしました。また、日本のベンチャーキャピタルなどのベンチャーを支援する方々とは約700名(グローバルをいれると約1000名)の人とお会いしてきました。約500名のITベンチャー企業のキーパーソンとは直接携帯電話でやりとりできる関係も築きました。そういった経験からITベンチャー業界の動きはわかるようになってきました。 また、こうした関係を築くことでベンチャー企業との協業案件がいくつも生まれましたし、ビジネス的にもパートナーシップの一定の成果が上がってきています。
  実は以前、米国IBMでは、ベンチャーキャピタルとの関係を作るためにベンチャーキャピタルに投資していました。投資をしなければベンチャーキャピタル、そしてその先の投資先企業との良好な関係を構築することができないのが普通ですから。それに比べると私が日本で行っている活動はあまりお金がかかりません。4年ほど前に私の活動について社内に情報発信したところ、「米国では膨大なコスト(投資)をかけているのに、日本では勝屋さんひとり分の人件費と諸経費しかかかっていない。効率の良いやり方だ」ととても評価されました。
  確かに私はLP(出資者)ではありませんからベンチャーキャピタルやベンチャー企業の方にアポイントを取っても相手に構えられないというメリットはありました。そして何より、企業同士が協力関係を築くために必要なのはお金ではなく、結局は人と人との信頼関係が一番大切なのだと思えるようになりました。


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